不動産登記実務の流れ/その②-3(見積り編ー注意点)
見積もり事の注意ポイントとりあえず今回でラストです。
注意ポイント⑨
・現在の所有者の取得原因が「担保不動産収益執行」になっていないか?
司法書士事務所では取引の前日に「未失効照会」という請求をおこない、現在発行されているであろう「登記識別情報通知」という権利証に対して確認行うことが通常です。この未失効照会は無料で行うことができるのですが、現在所有者の取得原因が「担保不動産収益執行」等になっている場合はこの未失効照会という請求が行えなくなるために、確認の方法として不失効証明という手続きを使用するのですが、こちらは1件300円と有料となっている上に手続きにかかる時間が未失効照会より長くかかるため注意が必要です。
注意ポイント⑩
・区分建物(マンション等)の場合に共有部分はどうなっている?
基本的にはマンション等の区分建物には共有部分というものが存在します。会議室やエレベーター・ボイラー室などなどです。こういった共有部分は原則的に所有会社や管理会社などが一括管理していることがほとんどなのですが、稀に居住者に対して持分の割合がおこなわれていることがあります。この場合は売買の際にマンションの居住部分と一緒にこの共有部分の持分を名義変更する必要があります。
注意ポイント11
・売買がオーバーローンでの購入になっていないか?
資料を確認したときに、不動産の取引価格よりもかなり高めの金額で融資金額が設定されている場合はオーバーローンの可能性があるため注意が必要です。オーバーローンとは例えば住宅の買い替えの際に、居宅購入のための融資に現在居住している物件の担保権を抹消するための金額を上乗せしている状態のことです。オーバーローンだと判断した場合は売却の取引についての確認や、取引の順番(買が先)等についても注意する必要があります。
注意ポイント12
・売買の当事者が外国人?
売買の当事者が日本人でない場合は、「日本居住の外国人」と「外国居住の外国人」によっても取り扱いが変わってきますし、どの国なのかによっても大きく異なります。また、売主の場合で住所変更などの登記が必要な場合は日本人の時と比べて必要な書類が変化したり、手続きに時間がかかったりといったことも起こりますのでしっかりと確認しておく必要があります。また日本国外に在住している日本人の売渡手続きの場合にも、国内に住所登録が残っているか否かで手続きの難易度が大きく変化しますのでご注意ください。
さて、3回に渡って見積時の注意ポイントを書きなぐってきました。実際には細かな点についてさらに無数の注意ポイントがあるのですが、現状はこのぐらいにしておきます。
実務を行う上では実際に多くの書類や多くの案件に触れる事によって肌感として注意することを判断していく事にはなるのですが、とにかく重要なのは引っ掛かりを持つという事です。
いつもと何か違う記載があるとか、何か気になる箇所があるとかそういった引っ掛かりを持つことが重要であり、知識として知っておくだけでもそういった何かに気づく可能性が高くなります。
勤務している司法書士であれば先輩が教えてくれる、不動産会社の営業さんならいつも依頼している司法書士が確認してくれる事ということもあるでしょうが、独立して個人で業務をしている司法書士はこの引っ掛かりに気づかないと最後まで対処できないままトラブルへと発展してしまうかもしれません。
個人的には自身の体験等からチェック表を作っており、案件のたびにかならずそれをチェックしながら行うようにしています。
面倒といえば面倒な作業にはなるのですが、これをしておくだけでかなりミスやトラブル・修正の回避や業務の効率化に繋がり結果的に時間の節約になっています。
いまだに思いついたことやヒヤッとしたことなどを追加しているので、将来的にとんでもない量になりそうなのでどこかで見直しは必要にはなってきそうですが、第三者視点で確認することができるこの作業は、特に少人数の事務所などでは非常に有用な方法だと思います。