遺された家族の為にできる手続き/パターン①
さて、前回の「全財産を相続させる!?」の続きです。
前回例示しました「子のいない夫婦で夫が亡くなった場合に全財産を簡単な手続きで妻に渡したい」ときにつかえるパターン①~③のうち①についてです。
①遺言書を作っておく
一番オーソドックスな形です。遺言書が有効に成立するように書式を整えて「全財産を妻○○○○に相続させる」と書いておけばOKです。厳密にいえば直系尊属(父母等)には「遺留分」という一定の相続分を主張することができる法制度もあるのですが、よほどこじれた関係でなければそこまではしないと思いますし、主張されても主張された方の法定相続分の半分までしか請求できません。
遺言書のパターンとしては
Ⅰ.自分で書いて自分で保管しておく「自筆証書遺言」
Ⅱ.自分で書いて法務局に保管してもらう「法務局保管自筆証書遺言」
Ⅲ.公証人に作成してもらい公証役場にて原本保管「公正証書遺言」
このあたりが選択肢となると思います。「秘密証書遺言」とか「危急時遺言」とかほかにもいろいろあるんですけどまぁあまり現実的ではないので割愛します。
次はこれらの簡単なメリット、デメリットについてですが
「自筆証書遺言」
メリット:内容を基本的に誰にも秘密にできる・費用がかからない(専門家への相談料ぐらいは必要かも)・いつでもすぐに作成、書き換えができる
デメリット:死亡後に遺言書が発見してもらえない可能性がある・悪意の相続人による隠ぺい、偽造の可能性がある・本人作成かどうか争いになる可能性・家庭裁判所による検認という手続きを相続人がする必要がある・方式の不備、内容の不備によって無効となるおそれがある
「法務局保管自筆証書遺言」
メリット:1通3900円で法務局が保管してくれる・預けてしまえば自身が死亡するまで第三者は内容の確認ができない・法務局で原本を保管するので隠ぺいや偽造、紛失の恐れがない・自筆証書遺言で本来必要になる検認手続きが不要となる(これは結構重要)、自筆証書遺言として適格性がないと法務局が預かってくれないので方式の不備であらそいにならない。
デメリット:法務局へ申請するための厳格な書類作成が必要になるのでやや大変(専門家へ依頼すればよいが、報酬支払が必要になる)・本人が法務局へ出向く必要がある(代理や郵送は不可)・内容の不備の確認まではしてくれないので内容不備で無効になるおそれがある
「公正証書遺言」
メリット:公証人が最終チェックをすることになるので法的な不備で争いになることがない・公証役場で原本を保管するので隠ぺいや偽造、紛失のおそれがない、自筆証書遺言で必要になる検認手続きが不要となる
デメリット:公証人に支払う手数料などの費用が結構掛かる・2人以上の証人が必要となる(相続人なるなる方以外で)
という感じです。
全体の費用としては
「自筆証書遺言」<「法務局保管自筆証書遺言」<「公正証書遺言」
となります。弊所にご依頼いただいた場合の費用の目安を参考にご覧ください。
詳しい内容については各種ホームページをご参考になるか、弊事務所へ「お問い合わせ」にてご連絡ください。
次回はパターン②の「生前にすべてあげてしまう」について見ていきましょう。ではよい週末を~