こゝろ/夏目漱石

 「私」と「先生」は鎌倉で出会った。そっけない人だが何だかすごく惹かれ日毎先生の家に遊びに行く関係となった。

 「先生」は奥さんと二人暮らしであるが仕事はしておらず、他人とは関わり合いを持とうとせず、日夜読書や散歩等をして過ごしていた。大金持ちというわけではないが、仕事をせずとも暮らしていけるだけの蓄えがあるのだという。奥さん曰く、昔は明るい性格だったのだが、ある日突然塞ぎ込み始めてしまい、今のようなおとなしい性格となったのだと。自分に悪いところがあるのなら教えて欲しいと頼み込んでも「君に悪いところなどない」と言われてしまい理由は一向に教えてもらえないとのことだった。

 しかし、ある日「先生」は自分にはある秘密がある、時期が来たら「私」にだけその秘密について一切合切教えると約束してくれた。

 ある日「私」の実家の父が大病を患ったと連絡があり、一時帰省することになる。ちょうど明治天皇崩御の時期だった。

 父の病状が悪化しいよいよというタイミングで「先生」から「私」宛に一通の便箋が届いた。不自然なほどに分厚く、「この手紙が届く頃私はもうこの世にはいないでしょう」という書き出しから始まる「先生」の秘密についての告白だった。

 「先生」は学生時代ある軍人の未亡人とその一人娘がいる家に下宿をしており、生活場所に困った友人「K」にもその下宿先を紹介し、4人での生活をしていた時期がある。

 「先生」は下宿先の娘さんに好意を寄せ、相手方からも好意を向けられていると感じていたのだが、「K」が来てからは娘さんの好意が「K」にむいていっているように感じてしまっていた。

 突然「K」から娘さんへの想いを告げられるが「お前には合わない」「自分の信条である禁欲を捻じ曲げることになり人として大変愚かである」等と告げうまくいかないように邪魔をしてしまう。さらに自分の味方であると感じていた未亡人の奥さんに「娘さんと結婚させていただきたい」とつげ、「先生」と「娘さん」の結婚が決定してしまう。それを知った「K」は遺書を残して自殺してしまう。しかしその遺書には自分に対するうらみや苦言、「娘さん」のことについては一言も触れられていなかった。

 その「娘さん」が現在の「先生」の奥さんであり、「K」のことについて思い悩み続けていた「先生」は「私」にだけ友人「K」との秘密を打ちあけ明治天皇崩御による殉死と見せかけられるタイミングを見計らって自殺してしまう。

 「先生」は奥さんには何も知らぬまま生きて欲しいと願う一方、自分の秘密についてせめて誰かに打ち明け、自殺の理由を知っておいと欲しいと願い「私」にすべてを打ち明けた。

 まさに「こころ」はそれが己のものであっても人の思い通りにすることはできないと感じる内容であり、「私」「先生」「奥さん」「K」誰の心も晴れない結末となった。

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