傲慢と善良/辻村深月

婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西沢架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていく上でのあらゆる悩みに答えてくれる物語」/解説より

 タイトルからは全く想像できないこの本のジャンルはおそらく「婚活」「恋愛」というところに分類されるのだと思われます。若干のミステリー要素を含んでいるものの、おそらくストーリーだけを箇条書きで書き出していくと「何が面白いんだろう?」という感じになってしまうでしょう。その単調なストーリーを基本としてその中でおこる内容や思考・人物像などを徹底的に細かく描写している点が本書若しくは本著書の特徴で、それによりにすごく深い内容となっておりました。

 タイトルにある傲慢と善良について、一般的な認識どおり「傲慢=悪いこと」「善良=良いこと」として描写がはじまり、それが物語が進んでいくにつれ少しずつその価値観が歪んで崩れていく感じに心がぞわぞわしていきます。読む人によってそれぞれの捉え方・感じ方をしながら読んでいくべき本であり、読書中のなんとも言えない気持ちを表現するのが非常に難しいです。文庫本で500P近くある決して短いとは言えない本作品を、割と一気に読んでしまったぐらいに面白く先が気になりどんどん進んでしまうぐらいの内容であったので是非読んでいただきたいと思います。

 内容とは全く関係ないのですが、本作のヒロインの名前が「真実」であるためとにかく「真実」という文字がいっぱい出てくるのですが、ミステリー調で書かれているため「真実」を「しんじつ」と読んでしまい、少しすすんでから「違う違う」と読み直すことが多々あったことが結構面倒だったことだけ付言しておきます。

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