殺戮にいたる病 ／我孫子武丸（ジャンル：ミステリー）

永遠の愛をつかみたいと男は願った-

東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は蒲生稔！くり返される量塾の果ての惨殺。冒頭から見も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。（裏表紙より）

俗にいう叙述トリックの傑作。

叙述トリックということでネタバレが相当作品に影響しますので、今後読む予定のある方はブラウザバックしてください。

本作は犯人が最後の殺人を犯したあと逮捕されるところからはじまり、その過去の物語として「蒲生稔」「蒲生雅子」「樋口」の3人の視点で時系列もばらばらにお話が続いていく。

稔は猟奇的なサイコ・キラーであり女性を殺害して死姦するというネクロファイル。

雅子は偏執的なまで息子に愛情を持っており、自らの家庭を保持することがすべて。

樋口は退官した元刑事で自身の知人が稔に惨殺されたことをきっかけに、その遺族である被害者の妹とともに独自捜査をしていく。

稔は彼の思う真実の愛を求めて次々と女性を殺害していく。

雅子は行動や持ち物等から自身の息子が世間をにぎわせているサイコ・キラーなのかもしれないと考えるが、最愛の息子がそんなはずがないと疑心暗鬼になっていく。

樋口は被害者の妹である「島木かおる」の提案によりかおるを使ったおとり捜査を行い偶然にも稔にたどり着いていく。

クライマックスで稔は自身の愛が母に向いているのだと気づき、自信の母を殺害し死姦しその現場を樋口らに目撃され発見されたところで終了する。

この作品の中で母である雅子は「息子」を疑い、犯人である稔は「母」を求めている。

基本的には読んでいる最中、息子である稔がサイコ・キラーであり、母である雅子と樋口をそれを探り、稔が母である雅子を求めるという理解で読み進めていくことになる。

しかし編集者あとがきにもある通り『絞殺した老女を死姦する男を目撃して妻の雅子が「ああ！なんてことなの！あなた！お義母さまに何てことを！」と絶叫することにより、サイコ・キラーである蒲生稔の正体が雅子の夫であり、物語中でずっと「父」という形で描かれていた人物であったことに気づく』ことになる。

そしてそのままスッと物語は終了し読後に口をあけてポカーンとすることになる。

すごく面白い物語と絶妙な読後感を味わえる作品なのだが、あらすじは説明し難いうえに「オチがすごいから」という説明すらネタバレになりかねず、内容的にかなりエグ目のゴア表現があるこの作品はとても人にお勧めしにくいのですが、ここまでお付き合いいただいたあなたは、オチをしっている状態込みで読んでみてもおもしろいのではないでしょうか？