また、同じ夢を見ていた/住野よる
友達のいない少女が出会ったのは、リストカットを繰り返す女子高生の「南さん」。とても格好いい「アバズレ」さん。一人静かに余生を送る「おばあちゃん」。そして、尻尾の短い「彼女」だったー。(あらすじより)
「君の膵臓をたべたい」の作者の2作目となる本作。相変わらずなんということはない日常を描いているストーリであり、ほんの少し変わった登場人物・ほんの少し不思議になっていく物語・そして読者に考える余白を与えてくれるという内容という作りになっています。
はっきりとは伝えづらいのですが作者の独特の言い回しなどが個人的には心地よく、内容の興味をそそる展開なども相俟ってするすると読み進められます。普段小説などの書籍を読みなれていない方でも読み始めてしまえば意外とさらっと読めてしまうのではないでしょうか。
では、以下からほぼ自分の為に書いている本作のネタバレストーリーになりますのでご注意ください。
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主人公「小柳菜ノ花」が出会ったのは
リストカットを繰り返し、人との関わりを持たずに、誰に見せることもないお話をつくっている女子高生の「南さん」
尻尾の短い彼女も懐いておりぶっきらぼうな彼女とのやりとりを楽しんでいた。
ある日約束していた授業参観に来れなくなった両親と喧嘩をしてしまったということを南さんに告げると、自身も親と喧嘩をしそのまま両親を無くしてしまったこと、喧嘩したまま二度と会えなくなったことを後悔しているということを語ってくれた。
そして名乗った覚えのない主人公の名前を呼び「帰ったらすぐに必ず謝ること」を涙ながらに主人公に約束させた。
その後、南さんといつもあっていた建物は取り壊しになってしまい二度と南さんに会うことはなかった。南さんの書いた素敵なお話もなぜか全く思い出すことができなくなっていた。
一人暮らしのとても格好がよく賢くオセロが強い「アバズレさん」は季節を売るお仕事をしているのだという。
ある事件をきっかけに主人公がクラスで無視されるようになってしまい、もう誰とも関わり合わない人生を歩もうとおもっていると告げると、自身の賢さを鼻にかけまわりのバカな連中との関わり合いを絶ってしまったこと、賢しく生きてきた自分の人生を壊していったこと、さらにそれすらも意味のないことだと悟り命を絶とうと考えていたことを話し、絵を描くことがすきなクラスメイトと仲直りするヒントを教えてくれた。
彼女は自分の小さな頃の口癖が主人公と同じ「人生とは」であったことを思い出し、絵を描くことが好きなクラスメイトが「桐生くん」であることを知っており、また名乗った覚えのない主人公の名前を呼び涙ながらに応援してくれた。
後日桐生くんと仲直りすること、そして人と関わりをもつということについての勇気を得た主人公が彼女のアパートを尋ねると、その部屋から優しそうな男性がでてきて、自分はここにもう4年住んでおり「アバズレさん」という女性などいないよと告げられた。
その後何度かアパートを訪ねてみたが二度と「アバズレさん」に会うことはなかった。
いつもおいしいお菓子を食べさせてくれる(主にフィナンシェ)木の家に住んでいる優しいおばあちゃん。
自分には外国に住んでいる絵描きの友達がおり彼以上に絵が好きな人は長い人生の中で出会ったことがないということ、「幸せとは?」という学校の授業テーマについてヒントをくれたり自身の考え方や自身が今幸せであることを前提として「みんなが選ぶんだよ、幸せになるためだけに」と教えてくれた。
おばあちゃんの家にはその絵描きの友達からプレゼントされたとてつもなく素晴らしい(と感じる)絵が飾ってあり、作者のサインとして「live me」とあった。
おばあちゃんは最後に一つだけ、と前置きをし「人生とは、すべて希望に輝く今のあなたのものよ。」と告げた。
おばあちゃんとサヨナラをしたあと、尻尾の短い彼女がおばあちゃんの家に残ると言っているような気がしたのでそのままにしておくことにした。
尻尾の短い彼女のありがとうとさようならを合わせたような鳴き声に見送られた後大きな風がして振り返ると、木の家も尻尾の短い彼女もいなくなり、そこにはただ原っぱがあるだけだった。
「また、同じ夢を見ていた」とつぶやき目覚めた主人公は大人になっていた。
大人になった主人公は
作家になり、お菓子の作り方を勉強し、猫を飼い、お付き合いしている桐生くんから絵をプレゼントされプロポーズされる。
その絵に入れた桐生くんのサインは「live me」と書いてあった。
物語の中で主人公が会っていた3人の女性は、
喧嘩したまま謝ることもできず両親を亡くし孤児となってしまった世界線の主人公である南さん。
他人を見下し毛嫌いし一人で生きていくことを決めた結果、自棄になり自身を壊し人生を終わらせようとした世界線の主人公であるアバズレさん。
桐生くんと結ばれるという選択をしなかった世界線の主人公のおばあちゃん。
ということであり、
皆それぞれが自分のやり直したいことに対して過去の自分にアドバイスをしているということだと思われます。
作中ではとにかく幸せとは・人生とはについて登場人物が触れていくことになります。
この作品の中では幸せについてそれぞれ
南さん「幸せとは、自分がここにいていいって認めてもらうことだ」
アバズレさん「幸せとは、誰かのことを真剣に考えられるということだ。」
おばあちゃん「幸せとは、今、私は幸せだったって、言えるってことだ。」
主人公「幸せとは、自分が嬉しく感じたり楽しく感じたり、大切な人を大事にしたり、自分のことを大事にしたり、そう言った行動や言葉を、自分の意思で選べることです。」
と語っており、
人生とはについてそれぞれ
南さん「人生とは、自分で書いた物語だ。推敲と添削、自分次第でハッピーエンドに書きかえられる」
アバズレさん「人生とは、プリンと一緒だ。人生には苦いところがあるかもしれない。でも、その器には甘い幸せな時間がいっぱい詰まってる。人は、その部分を味わうために生きてるんだ。」
おばあちゃん「人生とは、すべて希望に輝く今のあなたのもの」
と言うことでした。
皆さんにとっての「幸せ・「人生とは」について考え、一度言語化してみてはいかがでしょうか??