オーディオよるのばけもの/住野よる
夜になると、僕は化け物になる。寝ていても座っていても立っていても、それは深夜に突然やってくる。
ある日、化け物になった僕は、忘れ物を取りに夜の学校へと忍び込んだ。
誰もいない、と思っていた夜の教室。だけどそこには、なぜかクラスメイトの矢野さつきがいて--。(あらすじより)
化け物姿の自分を怖がる風でもなくにんまりと笑いコミニュケーションを取ろうとする矢野に正体がバレてしまい、夜の学校での不思議な交流が始まる。
矢野はクラスでいじめの対象となっており、
・積極的に嫌がらせをするグループ
・何かあった時にはしっかりいじめに加わるグループ
・基本的に見ぬふりをしているグループ
の3グループがあり、
昼の学校では主人公は見て見ぬ振りをしているタイプ。
夜の君と昼の君はどっちが本物?
という矢野の問いかけに悩む主人公。
矢野にとっては化け物の外見をした夜の自分以上に、いじめに消極的にだが加担する自分はもっと化け物なのではないだろうかと考えるようになる。
翌日いつも矢野がする「おはよ、う」という挨拶に対して、いつもの無視ではなく「おはよう」と返した。
いじめをテーマにしたなかなかに重めな内容となっており、主人公である安達=あっちーの視点のみで物語が進行していく。
そのため、主人公である安達がわからないことは読者もわからないというタッチで描かれており、
いろいろな不明点を残したまま物語は終了していく。
作中で最後のほうに、矢野がクラスメイトを評して
①「いじめるのが好きなふりして本当は誰かを下に見てないと不安で仕方ない女の子」
②「頭が良くて自分がどうすれば周りがどう動くかわかって遊んでる男の子」
③「喧嘩しちゃった元友達が、ひどいことされてて仲直りもできなくて誰に対してもうなずくだけしかできないくせに責任を勝手に感じて本人の代わりに仕返しをしてる馬鹿なクラスメイト」
と語る場面がある。
①はおそらくクラスカーストブービーの井口のことであり、矢野へのいじめを肯定することにより自身がいじめの対象となることから逃れている。
②は主人公の男友達の笠井。クラスの中心的人物であり積極的にいじめには参加しないというスタンスをとりつつも、いじめの主犯であり自分の行動によっていじめがはじまったり変化したりといったクラスの動きを楽しんでいると思われるやばいやつ。
③は緑川。矢野にひどいことをしたクラスメイトに犯人のわからない嫌がらせがおきるのだが、おそらく矢野がいじめられていることへの報復として緑川が起こしていることだと言うことがわかる。
矢野と緑川はもともと友達であり、作中で笠井は緑川が好きみたいな態度を積極的にとっているためその緑川と喧嘩をした矢野がクラスのいじめの標的となる。
しかし井口が矢野に反射的にかまってしまったことからいじめの標的になりかけた時に、突然井口をビンタするという奇行により自身の評判をさげることにより井口を守るという行為をしている。
それを踏まえると、友達であった緑川がいじめの標的になりかけていたのを知った矢野が緑川を助けるために喧嘩をおこしたのかもしれない。
さらにいうと、笠井は緑川を好きであるという態度をとることによって緑川にたいして奇行をした矢野のいじめがひどくなるようにと狙っているのかもしれないし、そもそも緑川を好きだという態度をとることによってクラスの中で嫉妬により緑川がいじめの標的となるようにしクラスの中でいじめが発生するように仕向けているのかもしれない。
いじめ、ダメ、絶対。